散歩

考えごとをしながら、1時間くらい歩いていた。
五月の末の空気は、そんなに冷たくない。

いま、西麻布にいる。

2004年の三月まで西麻布にある小さな会社で働いていた。毎日面白かったなぁ。
夜でも明るい東京の空。
ビルの明かりが雲に映って、夜がこんなに明るいなんて。

夜が、夜らしいところで生まれ育った。

星明かりがないときは、ぽつりと灯る外灯が、淋しげに佇む。山越えの道の外灯は、生きているようで怖かった。

表参道、西麻布を歩いていると、人が作った風景だなあとつくづく思う。

目に映る物全てに、それが人の手による仕業である匂いがする。

ビルとビルの間から見える空を、ただただ見つめるのみである。